LINEで送る
Pocket

中国歴代年号考(修訂本)
李崇智 編著 中華書局 2004年12月(初版 1979)
 

中国ではいわゆる正統とされた王朝以外にも、ありとあらゆる政権が年号を建てている。
なぜなら年号とは王朝の権力と正統性の象徴であるからだ。

 
この本は、前漢武帝建元元年(BC140)から1949年の中華人民共和国成立までの年号を時代順に整理している。それだけなら他に似た本がいくらでもあるのだが、この本がすごいのは、中国歴代王朝は言うに及ばず、反乱軍、地方政権、辺境の異民族政権まで含めた全ての年号を網羅していることである。
本書に掲載された中には、「政権」と呼ぶのもためらわれるほどの小勢力も多いが)
 

なお、著者は反乱勢力やマイナーな地方政権の年号については根拠となる史料や文献を明記し、考証の過程を読者にしっかり明示している。
ここのところは非常に好感が持てる。
 
 
満洲国の「大同」(1932~1934)や「康徳」(1934~1945)が載っているのは中国で出版された本としては異例だが、この程度はまだまだ序の口。
 
清代だけを取ってみても、本来咸豊の次に来るはずだった幻の年号「祺祥」(西太后らにより「同治」に決定)、さらには清代前半にしばしば世を騒がせた自称「朱三太子」の一人楊起隆が掲げた「広徳」(1673~1680)、呉三桂の「昭武」(1678)、呉世璠の「洪化」(1678~1681)、台湾の朱一貴の「永和」(1721)、林爽文の「天運」(1786)と「順天」(1787~1788)などなど、史料からマイナーな年号を丹念に拾い集めている。わずか数日から数ヶ月で滅亡した反乱軍の年号まで載せてあるのはすごいとしか言いようがない。
 
 
 
他の時代でも、五胡十六国、南北朝、五代十国の各国、さらに柔然、高昌、渤海、吐蕃、東丹国、西夏、遼(キタイ)、さらにはよほどの中国史通でも知らないような泡沫政権の年号まで、史料を執念深く探し出してしっかり掲載している。
 
きわめつけは遼の亡命政権である北遼、そして西遼(カラ・キタイ)の年号表。
ただ、本文の断り書きによれば、西遼の建国時期や紀年には異説がすこぶる多く、『遼史』ですら相互に矛盾する記事が見られるという
 
 
この本をめくっていると、中国人、さらには多くの民族の年号一つ一つに込めた願いがビリビリ伝わってくる。
単なる工具書としてだけでなく、一度頭からしっぽまで一通り読み通してみるといいだろう。