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新疆ウイグル「純粋な悪魔はいない」:日経ビジネスオンライン 2009年7月16日
新疆暴动撕裂 民族感情伤口 聯合早報 2009/07/08
中国民族矛盾的新特点 聯合早報 2009/07/08
南方周末 – 前苏联在民族问题上出了什么错? 南方週末 作者:马戎2008-10-22
南方周末 – 美国如何处理“民族问题” 南方週末 作者:马戎 2009-07-16

 

 

そもそも、中国における「民族」とは、国家の「民族識別工作」により分類されたもの、すなわち国家により承認された行政的区分であり、人類学の概念における民族 ethnic group とは異なる。いってみれば、市町村の区分のようなものである。

これはソ連から受け継いだ社会主義的民族政策で、民族を政治的、行政的区分として固定し、分割して統治するものである。戸籍には民族の欄があり、その情報は国の行政管理や福利厚生(優遇政策)のために用いられる。本人の意識がどうあれ、通常は一生「○○族」として生きていかねばならない。

だが、最近の中国においては、民族が政治的、行政的区分として固定されていることにより、逆に民族集団間の対立と矛盾が強まる結果となっている。具体的にいえば、政府が配分する富や資源を漢族と少数民族という民族単位で奪い合う結果となり、対立感情が高まっている。

中国の識者の間ではこれにより少数民族の「分裂」(独立)傾向が強まり、ソ連解体の二の舞になるのではないかという危機感も見られる。

 

そこで、最近の中国の識者の間ではアメリカ的「人種のるつぼ」モデルが提唱されている。日経BPの加藤嘉一氏のコラムをはじめとする各記事も民族別の分割統治をやめ、「人種のるつぼ」モデルを導入すべきだとしている。彼らの考えをまとめると、少数民族を特別扱いするのではなく、各民族を平等・公平に扱い、国民を「民族」という集団から、「国民」という一人一人の単位へと還元することで、対立を緩和しうるという考えのようだ。

 

でもちょっと待ってほしい。

アメリカの「人種のるつぼ」は結局のところ、色々な国々からやってきた移民が自国語や自国の文化を捨て、アメリカの文化と英語を学んで、アメリカ文化に同化・均質化していくという色彩が強い。 長い歴史の中で、漢族と他民族が独自の文化を持ち、かつ隣り合って暮らしてきた中国、そしてウイグル地区に当てはめるのは無理がありすぎる。

またアメリカという「人種のるつぼ」は確かに多くの民族や文化を一つに溶け合わせたが、同時に溶け合えないマイノリティを社会から排除してきた歴史もあることも忘れてはならない。社会から排除された者は生きるすべを失い、社会の不安定要因となっている。アメリカの黒人やヒスパニックの現状がいい例だ。

日経ビジネスオンラインの記事へのコメントでも指摘されていたが、現在のアメリカでは「人種のるつぼ」という言葉はもはや時代遅れとなりつつある。

アメリカのように建前上全ての民族、全ての国民に機会の平等と権利の平等が保障されている国家ですらそうなのだ。

中国では政府の言論抑圧政策や漢族の少数民族文化への無理解という現状がある以上、漢族による同化と異分子排除の圧力はなおさら大きくなるだろう。結局のところ、一部は圧倒的多数派の漢族へと同化され、それでも同化されない少数民族は社会から排除されるだけのことだ。

そして排除された少数民族は社会の不安定要因となる。現にそうなりつつあるが、さらにひどいことになりかねない。

もし「人種のるつぼ」モデルを中国に導入するとすれば、少なくとも民主化により各国民、各民族が平等に声を上げられるようにすること、そして民族間の経済格差の是正が不可欠だろう。さもなければ、民族対立がさらに深まるだけだろう。

中国の民族問題解決には、小手先だけのアメリカの真似よりも、もっと根本的なところに目を向ける必要があろう。