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岡本隆司『袁世凱――現代中国の出発』岩波新書1531、岩波書店、2015年2月

 

 袁世凱の生涯とその時代背景、そして清末中国の権力構造についてわかりやすく記述。
 要点がうまく整理されており、文章も読みやすい。
 
特に、清末中国の権力構造を、中央の西太后による「垂簾聴政」、地方の総督・巡撫の権力増大を表す「督撫重権」という二つのキーワードで説明している点はわかりやすかった。
 
 それにしても、袁世凱の清末民初の重要イベントでの「皆勤」ぶりには改めて驚かされる。
 
日清戦争、戊戌政変、義和団、光緒新政(北洋新政)、辛亥革命、その後の混乱と皇帝即位……よくもまあしょっちゅう登場するものだ。
 振り返れば奴がいるw

 李鴻章、洋務派官僚、西太后ら清朝を支えつづけた重鎮たちが時の流れとともに退場していき、変法派は半ば自滅、保守派も義和団もろとも粛清されていく。
 その中にあって、袁世凱は、堅実な手腕、政界遊泳術で、政治・軍事の両面で着実に実績を挙げつづけた結果、
重要な場面で常にキャスティングボートを握るに至ったということらしい。
 裏を返せば、清末民初の中国はそれだけ「人を得なかった」ということだろうか。

 本書を読む限り、袁世凱は事務処理能力に長けた実直な能吏であったという印象が強い。
 
だが、その反面、大局的、長期的視野には乏しく、辛亥革命後は時代の流れを読み誤り、失意の死を迎える。

 個人的な感想としては、袁世凱は、通俗的イメージのような乱世の梟雄というよりもむしろ治世の能臣だったのではないかという気がする。