「砼」――という漢字をご存知だろうか。
 マイナーな漢字なので、
ある程度中国語の心得のある人でも知らない人の方が多いかもしれない。実は中国人でもこの字の意味や読み方を知らない人が多い。

 これは中国語で「コンクリート」という意味を表す漢字で、旁の「仝」は「同」の異体字(古字)なので、そこから類推して tong2 トン と読む。漢字の六書の分類に従えば、形声文字に分類される。 もし「砼」をあえて日本語読みするとすれば、「ドウ」になるかもしれない。

 なぜこのような字形になったかといえば、「砼」は「コンクリート」を一文字で表すため、「人」・「工」・「石」という三つの漢字を組み合わせて造られた新しい漢字だから。コンクリートが「人工石」とは全くうまく思いついたものだと思う。

 ただし、「砼」は建設土木業界や技術者の間以外ではあまり使用されない。中国語で「コンクリート」という意味を表す場合、一般には「混凝土」(hun4ning2tu3)という三文字の単語を使用する。つまり「砼」は一種の業界用語。
 したがって、「砼」は一般の中国人にとってはなじみのない漢字で、意味や読み方を知らない人も多い。
自分が「砼」という漢字の存在を知ったのも、仕事で中国語の建設土木関連の文章を訳しはじめてから。

 ちなみに、混凝土という漢字表記は日本の土木工学者の廣井勇の発案といわれている。日本語では混凝土はそのまま「コンクリート」と読む。混(コン)・凝(クリー)・土(ト)と読みが覚えやすいし、ぜて固させるなので漢字の意味もコンクリートの特性にぴったり。戦前の土木工学関連の文献では「混凝土」という表記が多いので、中国語に取り入れられたのも恐らくこの時期だろう。

 「砼」そして「混凝土」。
 漢字という文字は本当にすごい文字だ。

” に対して8件のコメントがあります。

  1. Waldstein Hibiki より:

    瓩を思いだした。
    中国語と日本語の意味は違うですが。
    漢字は本当に複雑です。
    いつも漢字を読んで書いているが、分かる字はまだ少ない。
    そして、簡単な和製漢字が知るですが、もっと説明してくださいませんか。

    1. 電羊齋 より:

      「瓩」は日本語ではkg、中国語ではkWになるんですね。
      面白いですね。
      和製漢字について質問があれば、このコメント欄かFacebookで聞いてください。

    2. 通りすがり@日本 より:

      >「人」・「工」・「石」
      フリーダム過ぎるwwそれでもやはり理論的な感じがするのは、
      表意文字だからでしょうか。「をかし」です。
      そこで「和製漢字」(日本の立場では国字)を「あはれ」方向で御紹介します。
      中国にもある丼という文字は日本で陶器の器を意味するようになりました。
      「どんぶり」(シャムのチョンブリー渡来)。
      これは水に沈めた時に「どんぶり」と音がするからという説があります。
      そこから派生した和製漢字。
      井に木を入れて「ザンブと」。井に石を入れて「ドンブと」。
      いずれも擬音からですね。こんな漢字誰も知りません。

      1. 電羊齋 より:

        まさにフリーダム!
        理論的な感じがするのは漢字の原則にしっかり従っているからでしょう。
        漢字の持つフレキシブルさといったところでしょうか。
        「丼」にまつわる話は面白いですね。参考になりました。

        おっしゃる通り、「丼」という文字は中国では全然知られていないですね。
        以前何かで読みましたが、日本に来た中国人が食堂のメニューで「丼」という文字を見て、最初は「井」という文字にゴミでもついているのかと思っていたという話があります。

  2. Waldstein Hibiki より:

    中国語辞典には「丼」があるが、「井」の異字であるですから、「丼」は和製漢字ようです。
    「丼」が知る中国人は本当に少ないね。日本語セミナーで習ったが、吉野家しか見ません
    (だから、吉野家香港はいつも一生懸命に「丼」を紹介しますし、中国新年にも「鴻運”丼”頭」というスローガンを使った。ハイブリッドじゃないの?www)

    1. 電羊齋 より:

      「丼」は中国では「井」の異字ですね。
      >だから、吉野家香港はいつも一生懸命に「丼」を紹介しますし、中国新年にも「鴻運”丼”頭」というスローガンを使った。ハイブリッドじゃないの?www
      そうなんですかw吉野家やるなあw
      面白いですね。
      まさにハイブリッドw

  3. 杏桃来春 より:

    こんにちは、

    「丼」の字ですが、『粤京日注音 漢日字典』では、

    丼 dɑːm ̆ dǎn TAN : 井中に物の落ちる音。  と書いてあります。

    康煕字典によると、
    「廣韻》《集韻》《韻會》《正韻》

    1. 電羊齋 より:

      はじめまして。
      参考資料をお教えいただきありがとうございます。
      なるほど、「井中に物の落ちる音」、「投物井中聲」なのですね。
      参考になります。
      今後とも本ブログをよろしくお願いいたします。

コメントは受け付けていません。