「パパ、だから歴史がなんの役に立つのか説明してよ」――マルク・ブロック(著)、松村剛(訳)『新版 歴史のための弁明 ―― 歴史家の仕事』

マルク・ブロック(著)、松村剛(訳)『新版 歴史のための弁明 ―― 歴史家の仕事』岩波書店、2004年2月

 

「パパ、だから歴史がなんの役に立つのか説明してよ」。

マルク・ブロックは本書冒頭の息子の問いに答える形で、歴史とは、歴史学とは何かを語る。
問題意識と主体性の重要さ、時間への意識、史料批判など、歴史を研究する上での心構えと技術について語る。たとえ話と挿話を多く引用しており、面白く読めた。

ブロックは「なぜなら文献や考古学的史料は、それが一見きわめて明快で好意的に見えても、人がそれらに問いかけるすべを知らなければ何も語らないからである。」(p46)と語る。
単に文献や史資料を漫然と読み、羅列しているだけでは、それらは何も語ってくれないし、ましてや一つの研究さらには「歴史」として実を結ぶことはない。問題意識と主体性を持って、史料批判を行いつつ、自らが問いかけを発しなければならない。

ただ、不幸なことに、著者の死により本書は未完に終わり、冒頭にある「パパ、だから歴史がなんの役に立つのか説明してよ」という問いの答えははっきりと示されないままに終わった。それは本書を読んだ我々が答えを出すべきなのだろう。

(本書評は「読書メーター」に掲載した内容に修正・加筆を行ったものです)

「パパ、だから歴史がなんの役に立つのか説明してよ」――マルク・ブロック(著)、松村剛(訳)『新版 歴史のための弁明 ―― 歴史家の仕事』” に対して2件のコメントがあります。

  1. tomohiro より:

    難しいですよね。歴史学は。
    近隣の東アジアの国々(臺灣・韓国・中国)との関係性もあるし。
    最近、薩長史観に対する疑念と言う形で半藤一利氏など上野駅周辺地方出身、東北出身者から
    言われていますからね。
    關東では静かな問題として下町とその他の東京都や神奈川県を中心とした地域の東北をめぐる考えで
    意見の齟齬を感じます。

    1. 電羊齋 より:

      全く難しいものです。

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