『ノモンハン戦車戦――ロシアの発掘資料から検証するソ連軍対関東軍の封印された戦い ――』

   正月に帰国した時に読んだ本。最近関東軍関係の本を色々読んでます。

見所は著者がロシアの膨大な公文書の山から発掘してきた、大量の写真や詳細な戦況報告、統計資料である。

なんといっても、これまで文章でしか読むことの出来なかったノモンハン事件をビジュアルで知ることが出来るのはありがたい。プラモデルの好きな人にはおすすめ。 

そして、戦況報告や統計資料からは戦争の赤裸々な真実を知ることが出来る。人員ではソ連軍が日本軍を上回る損害を出していたこと、ソ連戦車には火炎瓶よりもむしろ対空機関砲や高射砲が効果を挙げていたこと、ジューコフ将軍の登場には実はかなり政治的な意味合いがあったことなど目新しい話題も多い。

なかでも、自分が最も興味を持ったのは、当時のソ連軍は部隊間の連携(通信・連絡)に非常に大きな問題を抱えていたという点である。

戦場では各部隊がバラバラに戦って無用な損害や無駄な時間を費やすケースが目立ち、時には同士討ちさえ発生した。

 二年後の独ソ戦で、ソ連軍は各部隊が有機的に連携することなく、ドイツ軍に各個撃破されていくが、ノモンハンですでにその兆しが現れていたのは興味深い。

 負け戦から教訓を得るのも難しいが、勝ち戦から教訓を得るのはもっと難しいようだ。

  

『ノモンハン戦車戦―ロシアの発掘資料から検証するソ連軍対関東軍の封印された戦い 』   独ソ戦車戦シリーズ 7 

マクシム コロミーエツ (著), 小松 徳仁 (訳), 鈴木 邦宏(監修) 大日本絵画 2005.6 ISBN: 4499228883 

『ノモンハン戦車戦――ロシアの発掘資料から検証するソ連軍対関東軍の封印された戦い ――』” に対して4件のコメントがあります。

  1. ぼく タバコを吸わない より:

    戦争が嫌いです。いつでも平和を願います。

  2. 電羊齋 より:

    >ぼく タバコを吸わない  様はい、私も戦争は嫌いです。ただ、戦争を防ぐにはまず歴史を知らねばなりません。それで、昔からよく軍事関係の本を読んでいます。

  3. tacaQ より:

    戦争は嫌いですが、毛が三本足りない為政者はもっと嫌いな阿Qです(笑)司馬遼太郎は、日本軍がボロ負けしたかなり叩いていましたが、実情はソビエトもかなり被害が深刻だったようで、痛み分けというのが妥当な評価だと思います。航空戦という観点でみれみれば日本軍の圧勝でしたが、越境した爆撃を日本軍が自制したためその制空権を生かすことができなかったというのが惜しまれますね。当時の外相東郷が停戦条件をソビエトと話し合う時、何なら10個師団かきあつめて徹底的にやってもいいんだぞ、と云ったらソビエトがマジでひびったとか・・・。(笑)

  4. 電羊齋 より:

    >阿Q 様正月休みは、関東軍に関する本を読みまくりました。この本もそのひとつです。なんだか、出先の独断専行、政府・陸軍中央との対立(戦略の不一致)、兵力の逐次投入、敵の過小評価といった当時の日本軍の悪癖が前線兵士の優先敢闘を無駄にしてしまった感がありますね。ソ連がスターリン以下、一貫した戦略で向かってきたのとは大違いですな(別の本によれば、ゾルゲ情報も一役買ったようです)。ただ、後に「大祖国戦争」勝利の立役者ともなったジューコフも、生涯で最も苦戦した戦いとしてノモンハンをあげているそうで、当時ソ連側も相当苦戦した様子が伺えます。司馬遼太郎氏ですが、大戦末期の戦車乗りだった関係で、日本戦車に関してはクソ味噌に言うところがありますから、多少割り引いたほうがいいかも。気持ちは分かるのですが。

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