東方録夢――第三回 蔵書の盛衰と人生の店じまい
私は主に書店、古本屋、中国書専門書店、さらには中国の通販サイトなどでいろいろな本を買っている。
蔵書はますます増えるばかり。
そこで今回は蔵書の話を。
内藤湖南「蔵書家の話」、清水茂『中国目録学』(ちくま学芸文庫、2025年)、そして髙橋智「中国蔵書家の話」(『東方』連載)を読んだ。
これらを読むと、中国の蔵書家たちが書物に注いできた情熱と執念がありありと伝わってくる。
しかし、その熱意とは裏腹に、蔵書家の家系が数代続くことは稀であり、多くの蔵書が当人の死後に散逸してしまったことも、これらの文献は示している。
最近では、荒俣宏氏が長年にわたり集めた膨大な蔵書を処分したというニュースが大きな反響を呼んだ。
また、私自身も古書店を巡る中で、著名な研究者の蔵書印や署名が入った本に時折出会うことがある。それらはおそらく、持ち主の死後に親族が手放したものなのだろう。
大学や研究機関、図書館が「○○文庫」として体系的に引き継いでくれるのは幸運な例である。多くの蔵書は散逸し、場合によっては単なる「廃棄物」として処理されてしまう。
さて、私自身に目を向ければ、蔵書家というよりは“積読家”である。読み終えないまま積み上がった本は増える一方で、このままでは生涯のうちに読了できるかどうか怪しい冊数に達している。
とはいえ、いずれ年を重ね、人生の終わりが近づいたときには、私も蔵書を他の希望者へ譲るか、古書として売りに出すことになるだろう。
大学院生だった頃、私が講義を受けていた老教授は「人生の店じまい」という言葉をよく口にされた。
退職時には蔵書を整理され、私たち学生にも雑誌や抜き刷りをたくさん譲ってくださった。教授は生前から少しずつ書物を手放していたらしく、亡くなる頃には研究者としては驚くほど蔵書が少なくなっていたという。その姿勢には学ぶところが大きい。
私もいずれは、そのように自分の蔵書を整理しながら人生を締めくくりたい。
しかし、それまでは「自分用の図書館」をできるだけ充実させ、ブログをはじめとする場で、集めた知識を少しでも形にして残していきたいと考えている。
参考文献・参考ウェブ記事
参考文献
清水茂『中国目録学』ちくま学芸文庫、筑摩書房、2025年。
参考ウェブ記事
青空文庫 内藤湖南「蔵書家の話」(初出:「書物の趣味 第一册」1927(昭和2)年11月 底本:『内藤湖南全集』第十二卷、筑摩書房、1970年)(2025年11月23日閲覧)。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000284/card2608.html
WEB東方 髙橋智「中国蔵書家のはなし」2019年8月22日(月刊『東方』2019年9月号)~2023年3月15日(WEB東方掲載)(2025年11月23日閲覧)。
https://www.toho-shoten.co.jp/toho/wt-zousyoka.html
2025.10.15 約2万冊の大半が「ゴミ」に…知の怪人・荒俣宏が蔵書を処分して感じたこと――精神的な「死」を迎えて(現代ビジネス)(2025年11月23日閲覧)。
https://gendai.media/articles/-/158888
2025.10.15 最後の1万冊は「産廃業者のトラック」が持って行った…荒俣宏が振り返る、蔵書2万冊を処分しきるまで(現代ビジネス)(2025年11月23日閲覧)。