広中一成『七三一部隊の日中戦争――敵も味方も苦しめた細菌戦 』

広中一成『七三一部隊の日中戦争――敵も味方も苦しめた細菌戦 』(PHP新書、PHP研究書、2025年)

これまでの七三一部隊についての先行研究を受け、七三一部隊が開発した細菌兵器が日中戦争でどのように使用されたかという全体像を明らかにする。

わかる点とわからない点を切り分け、慎重に検討している点に好感が持てた。

本書では日中戦争での兵力不足による行き詰まりの打開のために細菌戦が行われたという背景、細菌戦が単に七三一部隊だけでなく、日本陸軍の上層部により組織的に行われた実態、作戦次元での細菌兵器の使用目的と使用の様相、細菌兵器による被害を描き出す。

細菌兵器が中国の軍と民間人、さらには日本軍にも被害をもたらしていた様子には慄然とした。