2024年11月の読書メーター
11月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2292
ナイス数:135
教育虐待 ―子供を壊す「教育熱心」な親たち 1 (バンチコミックス)の感想
『東洋経済オンライン』で紹介されていたので読む。はっきり言ってホラー漫画レベル。かなり強烈な描写。現在の格差社会への不安から子供への受験教育に狂奔する親、そして親の不安を学習塾などが煽り、つけこんでいる様子、それによって心が壊れていく子供が描かれている。
読了日:11月04日 著者:ワダ ユウキ
教育虐待: 子供を壊す「教育熱心」な親たち (ハヤカワ新書)の感想
教育虐待の定義、事例、医学の観点からの教育虐待、時代的・社会的背景、支援者の取り組みなどについて紹介。親が子供に自分の夢や希望を勝手に背負わせて勉強を無理強いして子供の心を壊していく事例の数々には慄然とさせられた。言い古されたことだが、子供は親の所有物ではなく、別人格の独立した人間であることに気がついていない親が多いのだろうと感じた。また、本書に紹介されている受験教育に狂奔する親たちと中学受験ブームは、近年の格差と競争がさらに激化している社会の縮図にも見える。
読了日:11月04日 著者:石井 光太
女の園の星 3 (フィールコミックス FCswing)の感想
ジワジワきてクスッと笑えるギャグと独特なゆるさ加減がたまらない。星先生と奥さんのエピソードも微笑ましいし、風邪で寝込む星先生の夢も可笑しい。赴任当初の星先生が小林先生と出会う話、三者面談も面白い。好きだなあこの作品。
読了日:11月04日 著者:和山やま
女の園の星 4 (フィールコミックス)の感想
夏休み中の星先生と生徒たち。初田先生のエピソードが好き。小林先生の京都の甥っ子の京都弁がGood!職員室という大人社会に闖入してきた子供の言動がいちいちおもろい。星先生の観察日記を想像で書く鳥井さんもおもろい。別になにもイベントはなく、緩い日常が展開していくのだが、時々シュールなギャグがはさまれており楽しい。卒アル写真のデカ真珠ネックレスとデカ肩パッドが最高w
読了日:11月09日 著者:和山やま
道を拓く 元プロ野球選手の転職の感想
元プロ野球選手たちの引退後の歩みを描く。保育士、讃岐うどん屋、機動隊員、パティシエ、公認会計士、競輪選手などなど実にさまざまな人生がある。彼らの多くはプロ野球で挫折を経験し、いったんは野球を離れ、「元プロ野球選手」という肩書を重荷に感じることもあったが、新しい人生を歩み出すとともに、「元プロ野球選手」だった自分を肯定できるようになっていく。著者が述べるように「再生」と「自己肯定」の物語となっている。自分も数々の挫折と方向転換を経て現在に至っているので、元プロ野球選手たちの人生と彼らの語る言葉には共感した。
読了日:11月09日 著者:長谷川 晶一
加耶/任那―古代朝鮮に倭の拠点はあったか (中公新書 2828)の感想
加耶/任那の歴史と研究史についてよくまとまっている。『日本書紀』と『日本書紀』に引用される百済三書、『広開土王碑』の史料的性格についての議論も興味深い。著者は「任那日本府」は、倭国の出先機関でも領域支配機構でもなく、現地で土着した倭系の人々の総称であったとする。そして倭国の統制に従わない独立的存在であり、反百済・親新羅的な行動を取ったり、加耶/任那の独立を守るために行動したことも紹介されている。こうしたマージナルな存在は近代以降の国民国家・国境・民族などといった枠組では捉えきれないが、それゆえに興味深い。
読了日:11月09日 著者:仁藤 敦史
ラシード・アッディーン: モンゴル帝国期イランの「名宰相」 (世界史リブレット人 023)の感想
ラシード・アッディーンとイル・ハン朝についてのコンパクトかつ貴重な概説書。外来政権かつモンゴル帝国の各部族・集団、イラン系官僚などの寄り合い所帯であり、正当性、統治体制の確立と権力闘争に悩まされたイル・ハン朝の歴史がうまくまとめられている。また『集史』の枠組が詳しく紹介されている。特に『集史』の「モンゴル史」部分がモンゴル帝国の構成を忠実に描く一方で、イスラーム的人類史観にも基づいている点が興味深かった。東西の知の交流を背景とし、その担い手ともなったラシードの生涯とその時代について面白く読めた。
読了日:11月16日 著者:渡部 良子
就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差 (中公新書 2825)の感想
まず「就職氷河期世代」をきちんと定義する。その上で個人的な経験、印象ではなく、統計データに基づき就職氷河期世代の実態を明らかにしていく。大方の印象とは異なり、少子化はバブル崩壊以前から始まっていること、就職氷河期の地域間格差、ポスト氷河期世代の雇用状況も就職氷河期前期世代と同水準だったこと、就職氷河期後期世代の方が団塊ジュニア世代より出産数が多いことなど「目からウロコ」の指摘が多い。各章ごとの「まとめ」もわかりやすい。問題を先送りせず、正しいデータと証拠に基づいて問題を解決することが大切だと感じた。
読了日:11月16日 著者:近藤 絢子
言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるかの感想
笑えて、しかも言語学の学識に裏打ちされた深い内容。アラフィフのプロレスファンには「刺さる」ネタが多すぎw(この「w」や「草」についての考察もある)。ラッシャー木村の「こんばんは」に、なぜファンはズッコケたのかを追究。「絶対に押すなよ」から言葉の意図、意味、文脈、さらにAIについて考える。AIが「絶対に押すなよ」を理解するのはかなり難しいらしい。ユーミンの名曲をなぜ「恋人「は」サンタクロース」と勘違いしてしまうのかから、「は」と「が」の違いを言語学的に考える。……などなどどれも面白かった。
読了日:11月23日 著者:川添 愛
乙嫁語り 15 (青騎士コミックス)の感想
英国に向かうタラスとスミス。船乗り猫とチュバルの関係が面白い。19世紀半ば頃のロンドンと英国の描写がこれまた細かい。今より「外国」が遠い存在である時代、スミスさんに付いていくタラスさんも相当勇気があると思う。タラスさんの文化比較の視点もなかなか。スミスさんの親御さん特に母親にはなかなか結婚を理解してもらえず、とりあえず伝手を頼って二人で田舎暮らし。そして二人は結婚のためスコットランドへ。元姑さんにもタラスが生きていると伝わって良かった。アリとツンデレ新妻マディナさんも微笑ましくて良かった。
読了日:11月24日 著者:森 薫
言語学バーリ・トゥード Round 2: 言語版SASUKEに挑むの感想
言語と言語学について楽しみながら知ることができる本。プロレス愛にもあふれている。chatGPTなどの「言語モデル」についての解説2編が非常に楽しくてわかりやすかった。言語モデルのしくみとその問題点についてもしっかり触れている。倒置について、「飛龍革命」やジョジョを引用しながら、それでいて言語学の研究成果を踏まえて語るのも最高。メトミニーについての紹介、外国語効果や「-がち」用法についての考察も興味深い。「日本語は曖昧」、「日本語は非論理的」という俗説を論理的に否定するところも良かった。
読了日:11月24日 著者:川添 愛
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