2025年2月の読書メーター

2月の読書メーター
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孝経 儒教の歴史二千年の旅 (岩波新書 新赤版 2050)孝経 儒教の歴史二千年の旅 (岩波新書 新赤版 2050)感想
本書の内容をまとめると『孝経』を軸にした儒教二千年の歴史といったところか。基本を抑えつつ、興味深い指摘も多い。なかでも、今文・古文の対立といわれるものは実は清末民国の政治・学術状況が漢代に投影されたものであるという指摘が面白い。そのほかにも、古今の『孝経』についての議論、唐の玄宗御注、元々為政者の姿勢を示す物であった『孝経』が宋から明清時代に民衆教化のために使われた歴史、明清代での『孝経』の位置づけ、日本での『孝経』の受容と刊本など話題が豊富。巻末には鄭注を元とした『孝経』の翻訳が掲載されており有用。
読了日:02月09日 著者:橋本 秀美
民族がわかれば中国がわかる-帝国化する大国の実像 (中公新書ラクレ, 832)民族がわかれば中国がわかる-帝国化する大国の実像 (中公新書ラクレ, 832)感想
中国の少数民族そして最大の民族である漢族、そして民族政策についての良き概説書。個人的には満族の章が非常に良くできていると思う。また中国とモンゴルによる「チンギスハン」の争奪戦からは中国における「モンゴル」の位置づけの複雑さが見てとれる。近代における「中華民族」という枠組の成立についてもわかりやすく説明されている。また、中国における「民族」とはある種の政治的・行政的区分であって、当事者のアイデンティティや一般的な「民族 ethnic group」概念とは必ずしも一致しないことにも触れている。
読了日:02月11日 著者:安田 峰俊
批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書)批評の教室 ――チョウのように読み、ハチのように書く (ちくま新書)感想
本書は「精読する」、「分析する」、「書く」の3ステップと「実践編」の全4章からなっている。抽象的な理論だけでなく、具体的な批評ノウハウについても書かれており、非常に参考になった。特に3ステップ目の「書く」では『ごんぎつね』を題材にして実際に批評を書いており、なかなか面白く読めた。また「あとがき」は、本書を著者自身が分析し批評するという形を取っており、これまた面白く読めた。本書を読んで、今後いろいろな作品に接する上での一つの「見方」・「手法」が得られた気がした。
読了日:02月16日 著者:北村 紗衣
熱狂する明代 中国「四大奇書」の誕生 (角川選書 675)熱狂する明代 中国「四大奇書」の誕生 (角川選書 675)感想
「四大奇書」に代表される白話小説から明代という時代を読み解いた好著。元代の白話文の書記言語への採用と「楽しみのための読書」の発生、雅と俗、文と武の融合とそれによる白話小説の出版と普及、庶民的で激越な明の皇帝と士大夫、「江湖」に染まった武宗、善悪を併せ持つ怪物的人物、「情」を肯定する陽明学。あらゆる人間たちが熱狂的に「情」と「真」を追求した自由で猥雑な時代が読者の前で繰り広げられる。そして明代という時代と思想は清代に入り一旦否定されるが、明代が残した文化は受け継がれやがて近代に開花したとされる。面白かった。
読了日:02月23日 著者:小松 謙

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