瀋陽「汗王宮」についてのニュース
「汗王宮」(汗宮)とは、天命十年(1625)、清の太祖ヌルハチの瀋陽(盛京)遷都時に宮殿(現在の瀋陽故宮)の北に造営されたヌルハチの寝宮、すなわち私的な居所である。当時のヌルハチの居所は宮殿とは分割されていたらしい。
「汗王」とは現地におけるヌルハチの俗称で、「罕王」とも表記される。
最近、この汗王宮についてのニュースがいくつか伝わってきた。
まず、瀋河区の旧瀋陽城内城区域再開発に付随した汗王宮再建計画について。
沈阳将重建387年前汗王宫 预计在2014年底建成
沈阳网 2012年6月18日 01:43:09
http://news.syd.com.cn/content/2012-06/16/content_26217842.htm
(2012年7月8日閲覧)
上記リンク記事によると、旧内城区域北部の北中街の再開発の一環として、清代に現地に存在した汗王宮を再建するという。上海の某大手商業企業グループが参加する現地ショッピングモール建設で、ショッピングモール開発の条件として汗王宮の再建も行なえということになったらしい。
ショッピングモールの外観は再建される汗王宮に合わせたものになるとのことで、上記リンク先記事の写真は完成予想模型のようだ。
汗王宮の再建はすでに中国の国家文物局の認可を取り付け、計画部門の審査待ち。
清代康熙年間の瀋陽(盛京)地図『盛京城闕図』から汗王宮の大体の位置はわかっていたが、現地から大きな青石が発掘され、正確な位置も特定可能になったとのこと。
記事によると、汗王宮の再建は2014年竣工予定。
そして、ついに現地でヌルハチの汗王宮と思われる遺跡が発掘されたというニュースが飛び込んできた。
沈阳发现疑为努尔哈赤早期寝宫遗址
新华网 2012年7月2日 15:13:58
http://news.xinhuanet.com/photo/2012-07/02/c_123359447.htm
(2012年7月8日閲覧)
(日本語訳)
清初代皇帝ヌルハチの早期の寝宮を発見か=中国瀋陽市
新華社日本語経済ニュース-XINHUA.JP 2012年7月3日
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/politics_economics_society/299602/
(2012年7月8日閲覧)
リンク先には現地発掘現場の写真も掲載されている。写真は上の中国語版記事のほうが大きくて鮮明。
以下日本語訳から引用。
中国遼寧省瀋陽市北中街にある清の予親王多鐸王府遺跡の北側約50メートルの地点でこのほど、清代の遺跡が見つかり、出土した緑釉瓦が親王宮で使われる建材と確認された。専門家によれば、この遺跡は300年以上前の清の汗王宮で、初代皇帝ヌルハチの早期の寝宮である可能性がある。
では『盛京城闕図』を見てみる。
汗王宮の位置は城内北部中央やや東より(下図①)。予親王府は汗王宮の西南に位置(下図②)。
予親王多鐸王府(豫親王府)遺跡の北側約50メートルという位置は、『盛京城闕図』の記載とも符合する。また、新華社記事の発掘現場のカラー写真に写っている建物の基礎を見る限りでは、『盛京城闕図』に描かれた汗王宮の四合院風の建物配置に近いように見える。
現在の報道記事や写真を見る限りでは、この遺跡がヌルハチの汗王宮である可能性は高いと思う。今後の調査結果が楽しみでならない。
【追記】
沈阳发现努尔哈赤罕王宫和豫亲王府遗址
http://www.syd.com.cn 2012-07-31 18:10:53 来源: 沈阳网
http://news.syd.com.cn/content/2012-07/31/content_26281161.htm
(2012年8月3日閲覧)
この記事によると、最近三ヶ月間にわたる探査・発掘調査を通じ、当遺跡がヌルハチの居所であることが証明されたらしい。今後の続報及び発掘調査報告書の公開を待ちたい。
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参考文献
三宅理一『ヌルハチの都――満洲遺産のなりたちと変遷』ランダムハウス講談社、2009年2月