澁谷由里『張作霖──満洲の覇者、未完の「愛国」』

澁谷由里『張作霖──満洲の覇者、未完の「愛国」』(岩波新書 新赤版 2100、岩波書店、2026年)

「満洲(東北、東三省)」の覇者となった張作霖とその時代を描いた「北からの中国近現代史」。

混乱した現地情勢の中で、一介の用心棒から軍閥にのし上がり、王永江らを登用して東三省の改革に乗り出し、やがて孫文など関内勢力とも深い関係を結び、中国情勢を左右するに至る。
また、孫文との連携についても多くの紙幅が割かれていて、この点はもっと注目されてよいと思った。
孫文が張作霖を対ソ関係のカードとしようとしたという指摘は面白い。張作霖の「愛郷」をベースとした「愛国」は未完に終わり、張学良に受け継がれたという筆者の評価も興味深い。

中国近現代史では南からの風、南からの革命と近代化が注目されがち。
しかも張作霖の評価については、彼が革命派を弾圧したことや中国共産党創立メンバーの一人である李大釗を処刑したこともあり、中国においては微妙な問題をはらんでいる。
本書では張作霖と彼を生んだ「満洲」という北からの視点と、反共と愛郷、そして「愛国」的な側面にも注目している点で非常に面白く読めた。

自分は遼寧省で8年半を過ごし、特に瀋陽(かつての奉天)では張作霖・張学良の根強い人気を感じた。
また、東北三省の「東北人」意識、愛郷心の強さも知った。
本書を読み終えて、張作霖もまたそうした土壌の中で育った人物なのだと思った。

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