梶谷懐、高口康太『ピークアウトする中国 ――「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』
梶谷懐、高口康太『ピークアウトする中国 ――「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書、文藝春秋、2025年)
中国経済についてはEVなどハイテク分野の大躍進という「光」と不動産不況、社会を覆う悲観論という「影」の一見相反する現象が見られる。
本書では中国経済についてミクロ・マクロ視点、短期・中期・長期的視点、業界と市井の声から冷静に分析し、光と影のように相反する現象は、いずれも「供給能力の過剰と消費需要の不足」という中国経済の宿痾に由来しているとする。
またその要因として中国政府の供給サイドの効率化に偏重した政策、均衡財政主義的な中央財政と地方分権的な地方財政などの長期的・構造的課題を取り上げているところも読み所か。
これまでの中国ではこれらが経済成長の原動力ともなってきたが、現在ではこれらが通用しなくなりつつあるらしい。
中国経済については、昔から「光」と「影」の面が共に極端であり、故に中国経済に対する論調は楽観論と悲観論の両極端に偏りがち。
本書では、中国経済の「光」と「影」の面がいずれも「供給能力の過剰と消費需要の不足」という問題に由来するもので、いわば「コインの裏表」であることが明らかにされ、「腹落ちした」感じがする。
それから、個人的に興味深かったのは中国で竹中平蔵的な供給サイドの改革、新自由主義的改革が高く評価されていることが取り上げられていた点。
私も2000年代中期から2010年代初期の胡錦濤政権時代に中国に在住した折にそうした中国の論調を目にしたことがある。
当時の中国側にはそうした供給サイドの効率を高める新自由主義的改革が中国に山積する課題の処方箋として映っていた面は確かにあったと思う。その是非はともかくとして。
本書評は「読書メーター」に投稿したものを加筆修正しました。
https://bookmeter.com/reviews/125485939