獅子の瞳が輝いて
『満族史研究』第4号(2005)の風間伸次郎「シベ語調査旅行記」を読み返していて面白い箇所を発見。
2004年夏、新彊ウイグル自治区チャブチャルシベ自治県にシベ語の調査に赴いた風間氏らは、現地でも「ドラえもん」、「ドラゴンボール」、「クレヨンしんちゃん」が放映されていることを知る。しかもなんとウイグル語字幕つき。
さらに、シベ族の結婚パーティに招待された風間氏らは、ある少年の歌った歌に驚くことになる。
我々は中庭に出て、片づけの進むさまを眺めていた。そこへ品のいい感じの老婦人が、孫の少年をつれてやって来た。「この子は日本の歌が歌える」と言う。そしていきなり、少年が歌いだした。「トチジェンアラシガマキオコリ~マキオコリ~(中略)モエロレオ、モエロヨ~、アチムナ?」少年は日本の子供向け番組「ウルトラマンレオ」をいつも見ていて、その主題歌だけは日本語で歌われていたのをすっかり覚えてしまった、というわけだ。最後の「アチムナ?」はシベ語で「合っている?」という意味である。遠く天山山脈のかなたまでシベ語を求めてきたオレたちと、この第4ニル(引用者注:チャブチャルの地名。八旗制度のなごり)で日本の歌を覚えてしまった少年が出会う。マスコミの力は本当に恐るべきものだ。
「トチジェンアラシガマキオコリ~マキオコリ~(中略)モエロレオ、モエロヨ~」は「ウルトラマンレオ」のオープニングテーマの歌詞の「突然あらしがまきおこり~まきおこり~(中略)燃えろレオ、燃えろよ~」の箇所。さっき、ネットで検索した歌詞を載せておきます。
「ウルトラマンレオ」(前期オープニングテーマ)
作詞:阿久悠 作曲:川口真 歌:真夏竜(二番歌詞、TV版オープニングでは二番を使用)
突然あらしがまきおこり(まきおこり)
突然炎がふきあがり(ふきあがり)
何かの予言が当たる時
何かが終わりを告げる時
誰もが勇気を忘れちゃいけない
やさしい心も忘れちゃいけない
獅子の瞳が輝いて
ウルトラマンレオ
レオ レオ レオ レオ レオ
燃えろレオ 燃えろよ
ウルトラマンレオ 真夏竜・少年少女合唱団みずうみ 歌詞情報 – goo 音楽(2010年1月10日閲覧)
http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND23907/index.html
ひたすら熱い歌。作品自体もかなり熱い作品でいわばスポ根版ウルトラマン。
このシベ族の子供にもウルトラマンレオの熱い心が伝わっているだろうか。
最近の現地はいろいろな困難が降りかかっているようだが、この子がウルトラマンレオのような情熱と正義感を併せ持った人間に育っていることを祈りたい。
天山山脈のかなた、中国・カザフ国境付近のチャブチャル。私も2005年夏に現地を訪れ、日本アニメ・特撮の波及ぶりは見てきたが、まさか「ウルトラマンレオ」までとは……
参考文献
風間伸次郎「シベ語調査旅行記」『満族史研究』第4号 満族史研究会 2005年六月
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現地の写真(2005年8月 管理人撮影)
シベ語看板(2005年8月)
http://honin.spaces.live.com/blog/cns!9DAA889CEE2D0AB0!5536.entry
チャブチャル(察布査爾)シベ(錫伯)自治県 (フォトアルバム)
http://cid-9daa889cee2d0ab0.skydrive.live.com/browse.aspx/.res/9daa889cee2d0ab0!1155?ct=photos
“獅子の瞳が輝いて” に対して4件のコメントがあります。
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ウルトラマンじゃないタロウさんが、聞いたら大喜びして演説に使いそうなネタですな。
>a-guy tacaQさん同感です。今の30代以下の中国人(漢族・少数民族含む)はみんな日本のアニメや特撮で育った世代です。中国政府は日本産を含む外国のアニメ・特撮の放映を制限していますが、地方局では結構無視してますし、DVDも正規・海賊版が至る所で出回ってます。新疆ウイグル自治区も例外ではありません。今思えば、麻生タロウさんは何事にせよ発想自体は悪くなかったのですが、まわりの人や補佐役に恵まれなかった印象があります。20年前の自民党なら良かったのですが。
そうかもしれませんね。ヲタク文化にしろ、j-popにしろ馴染みやすいのかな。韓国の人も日本の物が好きみたいだし・・・。所で、華人圏のArtistをアジア全域と、報道するのはやめるべきなのでは。私の母みたいな外国といえば西洋と信じ込んでいるお年寄りの逆鱗に触れた事が多かったのでは、そして、日本人はアジアという物をじっくり考えるべきでは。其れも自然に。
>平賀 知世さんかもしれませんね。文化の面では日本人はもう少し自信を持ってもいいのかもしれません。あと、西洋を基準に、もしくは西洋をフィルターにしてアジアを見るのも良くないでしょうね。