2025年4月の読書メーター

4月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2010
ナイス数:162

遊牧王朝興亡史 モンゴル高原の5000年 (講談社選書メチエ 818)遊牧王朝興亡史 モンゴル高原の5000年 (講談社選書メチエ 818)感想
ユーラシア大陸における遊牧の始まりから匈奴、鮮卑、柔然、突厥、ウイグル、契丹、さらにはこれまであまり知られていなかった阻卜、そしてモンゴル帝国に至る遊牧民の興亡史が最新の考古学的成果により語られる。本書からは、モンゴル高原の遊牧民が多様な集団が入り混じる多様さと国際的で高度な文化・文明を有する王朝を築き上げていったことがわかる。特に農耕・建築技術・製鉄技術についての成果が興味深い。これまでの遊牧民・遊牧王朝イメージを大幅に塗り替えてくれる本だと思う。考古学からここまでわかるのかと感心させられた。
読了日:04月01日 著者:白石 典之
天上恋歌 ~金の皇女と火の薬師~ 11 (11) (ボニータコミックス)天上恋歌 ~金の皇女と火の薬師~ 11 (11) (ボニータコミックス)感想
この作品では徽宗がタヌキというか「イタチ」というかえげつないんだよなあ。盟約を破りまくってちゃいかんでしょ。そりゃ金もキレるわなあ。アイラと康王がかわいそう。そしてアイラと凜之がいよいよ両思いに。あと、金の重装騎兵が恐ろしい。
読了日:04月01日 著者:青木朋
古代中国の裏社会: 伝説の任俠と路地裏の物語 (1078) (平凡社新書 1078)古代中国の裏社会: 伝説の任俠と路地裏の物語 (1078) (平凡社新書 1078)感想
前漢期の伝説的任侠である郭解の一生を軸に、古代中国の裏社会を紹介していく。任侠の徒による暗殺、盗掘、偽金作り、地方行政や中央政界とのつながりなどからは、任侠の行動原理である「義」と非合法的収入源(ヤクザでいうところの「シノギ」)、そして任侠が持つ隠然たる力がうかがえる。また、本書は、郭解ら前漢の任侠、犯罪者、役人、官僚、そして武帝ら有名人たちの群像劇としても読める。前著『古代中国の24時間』同様、著者の史料・文献・考古学的成果の博捜ぶりと読み込みぶりにはただただ驚嘆した。
読了日:04月12日 著者:柿沼 陽平
文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する (光文社新書 1352)文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する (光文社新書 1352)感想
野球部・体育会系への否定的イメージから説き起こし、野球部ひいては野球界の抱える問題を解剖する。明治大正にすでにあった勝利至上主義批判、本来包摂的特性を持っていた野球が次第に「男らしさ」に回収されていく過程、高校野球の問題、「男性性」の象徴の「軍人」から「野球選手」への移行、そして「見るスポーツ」としての消費、スポーツ新聞と「Number文学」に見られる野球への技術論的・批評的視点の欠如など興味深い指摘が多い。体育会系、文化系、ジェンダーの枠に囚われない野球、体育、スポーツの在り方を訴える著者には賛同。
読了日:04月21日 著者:中野 慧
本なら売るほど 2 (ハルタコミックス)本なら売るほど 2 (ハルタコミックス)感想
古本屋「十月堂」の主人と個性豊かなお客さんたちが素敵。味わいのある漫画だなあと思う。「今どきは希少本もネットで探せば簡単に見つかりますが……自分の足で歩き自分の目で本を見つける、この体験を手放す気にはなれなくてね」という中野さんの姿勢に古本屋好きとして深く共感。個人的には諸橋大漢和のエピソードも良かった。諸橋大漢和が安く売られているのはよくある話(自分も昨年夏に古本市で数千円で購入)で自分も複雑な気持ちになる。他のエピソードも良かった。
読了日:04月21日 著者:児島 青
二十四史―『史記』に始まる中国の正史 (中公新書 2852)二十四史―『史記』に始まる中国の正史 (中公新書 2852)感想
『史記』から『明史』に至る中国歴代王朝の「正史」である二十四史についてのコンパクトかつバランスの取れた概説。また民国期以降の『新元史』、『清史稿』も紹介し、さらには台湾の『清史』、近年の中国政府による『清史』編纂の動向にも触れる。『資治通鑑』など正史の関連文献にも目配りを怠っていない。本書では、二十四史および各種関連文献の特色、編纂過程、時代背景についてもわかりやすく解説され、参考文献も充実しているので、これから中国史・東洋史を学ぶ学生、または一般向けのガイドブックとして役立つと思う。
読了日:04月22日 著者:岡本 隆司
天幕のジャードゥーガル 5 (5) (ボニータコミックス)天幕のジャードゥーガル 5 (5) (ボニータコミックス)感想
「魔女」となっていくファーティマ、そしてボラクチン、その生け贄となったオイラト。陰惨な描写が続く。その一方でカラコルムの建設、漢地(旧金領)の統治、ジャムチの整備、帝国の拡大、東西への大遠征軍の出発と歴史が大きく動き出す中、オゴタイの次代をも見据えた暗闘が始まっていく。天幕の下での陰謀と歴史の大きな動きが同時に進んでいくストーリーが見事。
読了日:04月22日 著者:トマトスープ
立ち読みの歴史 (ハヤカワ新書)立ち読みの歴史 (ハヤカワ新書)感想
日本における「立ち読み」の前史、発生、発展を跡づけたユニークな読書史。著者は立ち読みを「自主的に個別のメディアを選び、個人で享受するという極めて近代的な行い」として位置づけている。また第十章「「立ち読み」に似て非なるもの」では上流・アッパーミドルによる「購入を前提とした」立ち読みと庶民層の「購入を前提としない」立ち読みを区別している。参考文献ガイド「もっと読書史を読みたい読者に」も懇切丁寧で充実している。実は、かくいう私も小さい頃から立ち読みを趣味としてきた人間なので、本書は非常に面白く読めた。
読了日:04月29日 著者:小林 昌樹
読書メーター