なぜ私が東洋史と清朝史に関心を持つようになったか(上)――カンフー映画、『三国志』、『ラストエンペラー』など

クリスマス企画として、2024年12月11日(水)から12月25日(水)のクリスマス当日まで特定のお題の記事を一つずつ掲載します。
名付けて「電羊齋お一人様 Advent Calendar 2024」。

8日目、12月18日(水)のお題は「なぜ私が東洋史に関心を持つようになったか(上)――カンフー映画、『三国志』、『ラストエンペラー』など」です。

なぜ私が東洋史に関心を持つようになったか(上)――カンフー映画、『三国志』、『ラストエンペラー』など

はじめに 東洋史ファンとしての自分

私は東洋史、特に清朝史のファンである。
それは私の拙いブログ記事を見ていただければわかると思う。
かつては修士課程(史学専攻東洋史専修)まで進学して研究者を目指したこともあるが、さまざまな理由であきらめた。
野球にたとえると、研究の最前線で活躍している研究者がプロ野球の一軍選手とすれば、私は三軍あたりの育成選手で終わったようなものである。大学院で最前線の研究者の凄さをかいま見たものの、結局は挫折した。

その後は陸上自衛隊でお金を貯めたり、中国で仕事をしたり、いろいろ職を転々としたり、中国語の翻訳の仕事をして、現在に至っている。
私の人生には東洋史が非常に大きな影響を与えたし、今も与え続けている。

今はアマチュア歴史愛好家として本を読んだり、学会を見に行ったり、勉強会に出て、東洋史の勉強を楽しんでいる。
これまた野球にたとえると、かつてはプロ野球の三軍あたりの育成選手で終わったが、野球の楽しさを忘れられず、草野球選手またはアマチュア選手として野球を楽しんでいるというところだろうか。

では、これから私が東洋史ファンになったきっかけについて書いていきたいと思う。

一、『三国志』をきっかけに中国史にハマる(1973~1989)

子供の頃から歴史や地理が好きだった。
学習漫画を読んだり、地図帳を眺めたり、小学校の図書室、公民館の図書室に入りびたって歴史の本や世界の地理の本を読むのが好きだった。

中国と中華圏についての関心はブルース・リー(李小龍)、ジャッキー・チェン(成龍)、ジェット・リー(リー・リンチェイ、李連杰)などのカンフー映画からだった。
私たち団塊ジュニア世代の男の子にとって彼らはヒーローだった。

そして中国と中華圏の歴史と文化に対して深い関心を抱くようになった決定的なきっかけは『三国志』だった。

まず、中学生時代ぐらいに日本テレビが制作したアニメの『三国志』(日本テレビ版『三国志』I・II、1985~86)を見た。
今思えば、于禁が女性だったり、曹操が金髪だったりしたし、原作とはまったく異なるストーリーなのだが、それなりに面白かった。
そこから原作の『三国志』に興味を持ち、公民館の図書室に置いてあった陳舜臣監訳『画本三国志』1~12(中央公論社、1983年)を読む。これは香港で刊行された『三国演義連関画』(香港・新雅文化事業有限公司、1976)の日本語訳。
勇壮な連関画と達意の訳文、強烈なキャラクターを持つ登場人物たちにたちまち魅了され、読みふけった(まあ日本テレビ版『三国志』は全然ちゃうやないか!ということに気がつき、それからは一段と大人が信じられなくなった思春期の私であったが……)。
これが私が中国と中華圏にドハマりしたきっかけだった。

『画本三国志』全12巻
『画本三国志』第2巻と第1巻、第2巻表紙は貂蝉と董卓と呂布、第1巻は「桃園の誓い」のシーン
『画本三国志』第5巻の阿斗と劉備、趙雲と張飛、『画本三国志』第4巻表紙
『画本三国志』だが、昨年、懐かしくなってウェブサイト『日本の古本屋』で買ってしまった。

 

それから高校一年生の頃には、パソコン版とファミコン版の『三国志』、『三国志II』(光栄、現コーエーテクモ)にもハマった。
光栄の『三国志』シリーズでいろいろな武将を覚え、三国時代にも興味を持ち、そこから中国のいろいろな時代に興味を持つようになった。

さらに陳舜臣『小説十八史略』(毎日新聞社)も読むようになった。
『小説十八史略』は『十八史略』を直接小説化したものではなく、『十八史略』が扱う古代から南宋滅亡までの中国の歴史を小説化したもの。
小説ゆえの脚色も多いが、その頃の自分にとっては中国史のよい入門書になったと思う。

二、高校時代~大学2回生 中国近現代史、東洋史(1989~1994)

高校一年生の頃、1989年6月4日、中国で「六四天安門事件」が発生する。
高校一年生の自分はちょうど中国に関心を持ち始めた頃でもあったので、極めて大きな衝撃を受けた。
そして、なぜこのような事件が起きるのかという疑問を持ち、それによりますます中国への関心が高まった。
特に中国近現代史への関心が高まり、公民館図書室、高校や地域の図書館では関連書を読みまくった。

『三国志』も『三国志演義』の完訳版を読んだ。

また、映画『ラストエンペラー』をテレビで見て、溥儀の数奇な生涯を知り、中国近現代史への関心がますます高まった。
華麗でスケールが大きい映像は一生忘れない。
後に自分が大学で清朝史を学んだのはこの映画の影響が大きい。
大げさではなく「人生を変えた」映画。

高校の図書室では世界史の概説書を読み、モンゴル帝国にも興味を持ち始めた。
また、高校の世界史の先生がチンギス・カン大好きで、『元朝秘史』に出てくる有名なシーンを授業中にものすごく熱心に解説してくれたのを覚えている。
ジョチとチャガタイの確執なんてテストにも受験にも出ないのに(^0^;)。
先生、おかげで私は歴史好きなろくでもない大人に育ちましたよ~!

そして次第に大学で東洋史を学ぶことを志していく。
しかし、私は世界史と日本史、国語以外の成績はまるでダメ。
高校3年生の夏頃にようやくギアを上げて受験勉強を始めて、あちこち受けてようやく受かった某大学に進学。

それから東洋史を本格的に学び始める。

大学でも中国近現代史への関心は強く、魯迅を読み、中国近現代史、特に中国共産党の歴史に強い関心を持っていった。
第二外国語として中国語を学び始め、ますます中国にハマっていった。
んまあ、中国語を学び始めたのには「同じ漢字だから簡単だろう」という不純な動機もあったのだが。

そして大学3回生の頃に東洋史専攻を決め、後に清朝史、満洲語を学ぶことになるのだが、そのことは以下の後半の記事で書くことにする。