百元籠羊『オタ中国人の憂鬱――怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力――』
百元籠羊『オタ中国人の憂鬱――怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力――』武田ランダムハウスジャパン、2011年
本書は中国のアニメ・オタク文化関連の掲示板を翻訳している「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」の内容に加筆し、一冊にまとめたもの。
カバー表紙と裏表紙は、それぞれ中国人の日本人への蔑称である「小日本」と「日本鬼子」を萌え擬人化した「小日本(こひのもと)」と「日本鬼子(ひのもとおにこ)」のイラストが掲載(後述)。
本書の冒頭「はじめに 『オタク』が日本を救う!?」では、面白いエピソードが取り上げられている。著者が催した日中学生交流会で、日本側は中国の文化や「歴史問題」について話すつもりだったが、中国側は日本のアニメ・漫画・ゲームについての話題ばかりだったという。
中には「日本には三種の神器ってものがあるんだよね!それはスク水!ブルマ!セーラー服という三つが!」などという発言をする者さえいたとかw
中国の若者への日本のオタクコンテンツの影響はことほどさように大きい。
これは、私自身の体験とも一致する。私も留学中、多くの中国人学生と知り合ったが、こちらが中国史や中国文化の話題を振っても反応が鈍かったのに対し、日本アニメ・漫画などオタクコンテンツについては非常に熱心に質問してきた。
そして、著者は、中国の若者の日本への反感は感情的なものが大きいので、理屈や話し合いでどうにかなるようなものではないと指摘した上で、「しかし、そんな彼らとも『話ができる』『日本への反感を抜きにしてやり取りできる』貴重なジャンルが日本発のアニメや漫画など、日本で言うところのオタク系コンテンツです」としている。これは本書全体を貫くテーマとなっている。
本書は全四章構成となっている。
第一章「オタ中国人的『名作』」・第二章「オタ中国人的『古典』」では、オタ中国人(オタク中国人)に大きな影響を与えた「名作」・「古典」作品と、オタ中国人の作品への感想を紹介している。そこからは、我々と同じく作品に熱中し、一喜一憂する等身大の人間、中国の「おまいら」の姿が見出せるだろう。
面白かったのは、オタ中国人の「実物大ガンダム」への反応、「ヘタリア」同人活動の紹介や「北斗の拳」・「聖闘士星矢」・「SLAM DUNK」・「ときめきメモリアル」へのオタ中国人の熱烈な思い入れだった。
なお、第一章・第二章では、有名作品の中国語名も紹介されているので、中国人との話のネタにも使えるだろう。
第二章・第三章の中間には「オタ中国人増殖の背景」という書き下ろしコラムが挿入され、オタ中国人増殖の背景、中国人の学生生活、海賊版などについて、懇切丁寧に解説している。
一方、第三章「オタ中国人が直面する『日本と中国の違い』」、第四章「オタ中国人が困惑する『オタク文化』」では、中国オタクの日本文化への疑問・困惑、日本オタク文化との相違点について紹介している。特に、日本の「男の娘」ジャンルが中国で独自の発展を遂げた「偽娘」は注目に価する。
オタ中国人は日本文化についてはかなりの知識を有し、オタ日本人との共通点も多いが、それでも両国の文化や国情の違いからくる疑問・困惑が生じていること、「偽娘」のような中国独自の展開も見られることも見逃してはならない。
「おわりに『日本鬼子』オタ中国人への侵攻開始」では、最近の日中間のゴタゴタや「小日本(こひのもと)」と「日本鬼子(ひのもとおにこ)」への中国オタクの戸惑いを紹介。これは、本書でも説明されているように、「小日本」と「日本鬼子」を萌えキャラ化することによって、蔑称とは別の概念を与えようというネット上のプロジェクトであり、派生キャラもどんどん生まれているという。
そして、今までにない「反撃」をされたオタ中国人の戸惑いについても掲載している。
著者は、最後に以下のように主張している。
日本と中国は、共に漢字を使っていたり文化の影響が見て取れたりすることから、全く関係ないように見える他の外国と比べて、お互い何となく「知ってるつもり、理解できているつもり」になれてしまいます。しかしやはり、別の国、別の文化ですから基本的には異なっていて、理解するには難しい所が多い相手です。
交通手段や情報伝達手段などの発展や交流活動により、昔に比べていろいろな意味で日本と中国の距離は近づいてきています。もうそろそろ、共通点から始めて「理解したつもり」「理解できる、理解してもらえる」といった考えで付き合うのではなく、「分からない」「理解できない」というのを前提に、その中でどうにか少しでも「通じる」ことを探す方が現実的なのではないでしょうか。
これには全面的に賛同したい。自分も日中間のすれ違いの原因として、「理解したつもり」「理解できる、理解してもらえる」という考えがあるとつねづね感じてきたからだ。ネットやリアルでの日中間の叩き合いを観察していると、行間から「なんでこんなことも分からないんだ?なんで分かってくれないんだ?」という焦りと戸惑いが読み取れることがままある。
そして著者はそうした中で、比較的通じやすいネタとしてオタク関係のネタがあると指摘して本書の結びとしている。
以上のように、本書を読めば、オタクコンテンツが今や日中文化交流において非常に大きな役割を果たしていることがわかる。本書はオタクコンテンツによる日中文化交流を概観する上で非常に役立つ。
中国の現状と日本のオタク文化の双方に精通する著者ならではの好著といえる。本文も200ページちょっとで手短にまとまっているので、気軽に読んでみてほしい。
“百元籠羊『オタ中国人の憂鬱――怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力――』” に対して16件のコメントがあります。
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視覚に訴えるってスゴい力なんだと思います。
ボーカロイド達だって、あの「キャラ」=見た目がなかったら、
ここまで熱くなってたかどうか。KAITO、MEIKOの箱絵とミク以降のそれを比べられたい。
>共に漢字を使っていたり
じゃあローマ字を共有してる人々はとか考えると、見た目の持っている意味が漢字とは違う。
ローマ字は見た目を書体に担わせるが漢字は文字そのものが……
長くなったので又別の機会にww。
同感です。
ボーカロイドも中国のオタク層の間で大人気です。
嫁も日本の美少女アニメ・萌イラストが大好きです。
(中国では、日本の美少女・萌キャラはむしろ女性に人気があります)
視覚に訴える力は全く凄まじい物があります。
>漢字・ローマ字
これは興味深いテーマかも。
深すぎて、私の手には余りそうですが。
初次見面
日文不好,請指正
相比台日間的”親密”,近來中日民間交流一般,固然類似上海Animelo的動漫活動有助中日交流(沒看,因為実里樣不在>..<)などイベントは二つ国の繋がりが強化するが、そんな関係は心配を掛けるね。
中国が嫌い日本オタがたくさんで、ニコニコと2chでは特に多い。日本人の孤高さに加えて、日本文化が殆ど分からない中国人と対話することは難しいそうです。そして、反日オタもあったぞ
中国人の国民性が向上は必要ですが、日本人の謝りと善意も不可欠と思う。
>ボーカロイドも中国のオタク層の間で大人気です。
正解。しかし、私はボーカロイドが好きじゃなく、無口、文学少女が好きです。
はじめまして
初次見面!日本語が上手ですね!
>相比台日間的”親密”,近來中日民間交流一般
同感。確かに最近の日中民間交流は今ひとつですね。
オタクを通じた民間交流がもっと進むといいのですが。
>中国が嫌い日本オタがたくさんで、ニコニコと2chでは特に多い。日本人の孤高さに加えて、日本文化が殆ど分からない中国人と対話することは難しいそうです。そして、反日オタもあったぞ
>中国人の国民性が向上は必要ですが、日本人の謝りと善意も不可欠と思う。
这样写更自然一些
>中国嫌いな日本オタがたくさんいて、ニコニコと2chでは特に多い。日本人の孤高さに加え、日本文化がほとんどわからない中国人との対話は難しそうです。それから反日オタもいます。
>中国人の国民性の向上も必要ですが、日本人の謝罪と善意も不可欠だと思う。
同感。
お互いアニメ好きなんだから、仲良くすればいいのにww
こうした問題は一朝一夕に解決できるものではありません。アニメや萌えを通じて、交流が少しでも盛んになればいいですね。
>ボーカロイドも中国のオタク層の間で大人気です。
>正解。しかし、私はボーカロイドが好きじゃなく、無口、文学少女が好きです。
私も無口、文学少女が好きです!
但我的老婆是蹭得累,傲娇,太厉害,呜呜
長見識了
其實日語還是不太好,考日檢N4也有點吃力=.=”
不過還是很想與日本人聊聊天,交交朋友呢
至於老婆,不是說日本妻子很賢良的嗎?
わかりました。実は、日本語はままです。最近、受験しました日験N4もちょっとね……日本人と話して友になるつもりだ。
それより、日本人の妻は賢くないか?
谢谢回复!
日本語の勉強頑張ってね~(^O^)
纠正一下
>実は、日本語はままです。→実は、日本語はまだまだです。
其实我的老婆是中国东北人!很可爱!
同じ、亞細亞のことですが日本でも人気の韓国アイドルについて考えていました。
現在の日本は、有り体に言えば私の両親と同じで外国といえば西洋と信じ切っている年配層と
日本で流行っている物にしか興味のない
アル一定より下の世代の人間が多いように思います。
もし、アジアの映画・音楽を日本でヒットさせるならばこういった人間を
取り込むのが必須なんだと思います。韓国プロモーターは純粋にexileやモー娘。
が好きな日本のファン層を取り込んだけれども、日本のアジアヲタクは
とにかく西洋の流行文化や日本の流行文化に興味のある人々を
攻撃するような論調ばかり目立つと思うのです。
日本のアジアヲタクは孤立して止まないと思っています。
彼らが好きな物の一つである臺灣のドラマや音楽は
当の台湾人からしてみたら、「日本人の閉鎖性から伴う背景からソンな物は
日本人向きじゃない。」と言いきる人が多いです。
そういえば2chやニコ動は反韓主義者も多いけれども、
そんな反中・反韓主義者が好きで理想郷のようにあがめ奉っている
国って臺灣なんですよね。この国をあがめ奉る価値はどのくらい在るのか。
最近は台湾人の日本人を信用していない上、日本人の閉鎖性ばかり過剰に気にして
台湾ドラマや音楽に冷淡な態度を見ていると
崇める価値は薄い
のではと、思っています。
アジアオタクは確かにアジアの文化を広めなけれならないという義務感が強すぎますね。あと、過去に欧米文化流行の過程で冷遇されたために芽生えたコンプレックスもあるのかもしれません。
まあ、面白ければアジアだろうが欧米文化だろうが、肩肘張る必要はないと思うのですが。
>そんな反中・反韓主義者が好きで理想郷のようにあがめ奉っている国って臺灣なんですよね
台湾人と言っても人それぞれですから。
外国人を「親日」・「反日」に二分する事はあくまで日本人の都合ですし。
羡慕死了!! 羡慕死了!! 你有傲娇的老婆实在是太幸福了T_T 我现在是高二的学生 我最爱傲娇了! 自从看了零之使魔还有灼眼的夏娜后就得了钉宫病 我现在也在学日语 准备高中毕业就去日本留学 我想见钉宫T_T 三次元的女生除了傲娇我谁都不要T_T 到了日本我绝对要找到傲娇的女友! 我一定不会输给你的!
你好!
初次见面,请多光照!
我也是钉宫病!很像看蹭得累动画。但最近工作很忙,没有时间看动画。
我的傲娇老婆很可爱,但很厉害,跟傲娇老婆过日子也不容易,呵呵。
祝你学习进步!我祈愿你梦想成真,到日本找到傲娇女友!
がんばってね!
初次见面,请多光照! 非常感谢!我也是觉得又厉害又任性的傲娇老婆最可爱了! 将来如果我也有了傲娇老婆,我想就算她天天打我我都会觉得很幸福! 祝你和你的老婆能够永远幸福的生活下去! 方便的话 欢迎您经常来我们钉宫理惠吧看看! http://tieba.baidu.com/f?kw=%B6%A4%B9%AC%C0%ED%BB%DD 这里的朋友和您一样都是钉宫病患呦~ 本当にありがとう。俺はがんばる。 くぎゅううううううううう
谢谢祝福!
我刚才看到钉宫理惠吧,钉宫病朋友原来这么多啊!
がんばれ!
くぎゅうううううううううう
2ちゃんねるでの台湾への好感というのは純粋なものじゃない部分はあると思う。
尖閣問題で台湾が強硬な姿勢を取った時の2ちゃんねるの反応をみると聞くに堪えない罵詈雑言に溢れかえっていた。
台湾そのものに敬意を示しているというよりも『台湾人全員が「親日」だから(と思っている)』好きって人間が結構いるんじゃないかと思える。台湾に理想をいだきすぎてるからこそ、尖閣における台湾の態度に過剰に反応しちゃう。
本当に台湾を好きなら、少しでも台湾が日本とぶつかっただけで罵詈雑言が溢れかえることはなかったと思いますね。
いずれにせよネットの一サイトの反応であって、日本人全体のことじゃないですから真剣に考える必要はないのかもしれませんが。
同感ですね。
>台湾に理想をいだきすぎてるからこそ、尖閣における台湾の態度に過剰に反応しちゃう。
ですよね。可愛さ余って憎さ百倍というところでしょうか。
私も自戒したいものです。
私なりに、また考えてみた。
先日、臺灣の皆様が東日本自身の義捐金を送ってくれたのは
感謝しています。
それは評価します。
でも、台湾人にも二面性が存在していて、
臺灣よりも中国大陸に移住してそこで働いて子供を産んだ方が
安心という発言もあるようです。
どちらかといえば臺灣といえば神聖・ユートピア視に偏る日本の報道では
一部でもそう言う報道があるのは新鮮だった。
ポップカルチャーの面で台湾人がhong kongや中国大陸に視点を重視して
日本を軽視する行動も良く見受けられます。
某台湾ドラマが震災前の宮城県でロケに行ったのですが、
臺灣のマスコミは日本に対して提灯記事一つも書かずその事実を黙殺しました。
(大きく伝えたのはファンの日本人だけ)
逆に韓国のマスコミは日本にロケに行ったとき提灯記事を沢山書き
日本のファンよ俺達の映画・ドラマを見てくれという発言したのとは
好対照です。
だから、今回の義捐金も過剰には評価しません。
反日でありながら、日本をマーケットに考える韓国の映画・音楽業界にたいして
親日でありながら、日本よりも中国大陸・hong kongにばかり目のいく
臺灣サブカルチャー集団。
私はこういうのを見ていると人間の二面性を感じます。
日本人って結構お人好しすぎる。
かもしれませんね。
要は多面的な物の見方が大事だと思いますね。
世の中にはいろいろな人間がいますし、各個人にもいろいろな面がありますから。