瀋陽・遼西旅行記 その6 太平寺(錫伯家廟)(2012.8.25)
実勝寺を見た後、すぐ西側に位置する太平寺(錫伯家廟)へ。
実勝寺と太平寺の間の広場には歴代清朝皇帝の銅像がある。
皇帝たちの銅像
太平寺(錫伯家廟)山門
太平寺は康熙四十六年(1707)、盛京(現在の瀋陽)地域に住むシベ(錫伯)族たちの醵金により、盛京城外西北に建立されたチベット仏教寺院である。以来、シベ族たちの信仰を集め、「錫伯家廟」とも呼ばれている。
太平寺には、シベ族の盛京への移住、太平寺の建立に関する由緒を刻んだ嘉慶八年(1803)に立てられた満洲語の石碑があったが、現在は瀋陽故宮博物院に収蔵されている。
満洲語碑文のローマ字化および漢語訳は王鍾翰氏らによって行われている(王 1980、王 2004、瀋陽市民委民族史編纂弁公室 1988)。
現在は建物は残っているが、内部には仏像・仏具等はなく、寺院としては使用されておらず、シベ民族の歴史を展示する博物館として使用されている。
『瀋陽錫伯族志』によれば、太平寺は「解放」すなわち共産党政権成立以前にはすでに破壊を受け、活動を停止していたという。 以後、学校や工場などの機関により使用され、さらに文化大革命による破壊を蒙っている(瀋陽市民委民族史編纂弁公室 1988)。
改革開放後、ようやく保護が加えられるようになり、建物が修復され、シベ族の歴史を展示する博物館として使用されるようになった。
そして、今年6月にリニューアルオープンしている。
見学は無料。中国人は身分証明書を提示して見学。外国人はパスポートを提示し、門の守衛所で名前を記帳する。
入場すると、シベ族の盛京から新疆チャブチャルへの苦難の旅を描いた群像とレリーフがあった。
群像
苦難の旅路を描いたレリーフ
境内の建築内部には、それぞれシベ民族の西遷、民族の源流と歴史、風俗習慣、文学芸術、民家、婚俗、民族大団結をテーマとした合計七つの展示室が設けられている。
展示室内外の説明は漢語とシベ語が併記されていた。シベ語の説明だが、自分の満洲語は大分錆び付いているものの、大体どんな内容が書いてあるかぐらいは理解できた(満洲語とシベ語は書き言葉では基本的に同じ)。
展示物はパネル・模型・ジオラマ・レプリカが主流だったが、興味深い内容が多かった。特に民家、婚俗はレプリカの出来が結構よかった。
展示室内部が撮影禁止だったのが残念でならない。
ただ、最後の「民族大団結」のコーナーは、中国政府は少数民族政策でこんなにがんばってますよ!といった類の紋切型の内容で、あまり面白いものではなかった。
シベ語による展示説明文も含め、非常に楽しく見学できた。
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参考文献・WEBページ
参考文献
王鍾翰 1980 「瀋陽太平寺錫伯碑文浅釈」王 2004、pp.1571-1583(原載『清史論叢』第二期、原載時の題名は「瀋陽錫伯族家廟碑文浅釈」)
王鍾翰 2004 『王鍾翰清史論集』第三冊
瀋陽市民委民族史編纂弁公室 1988 『瀋陽錫伯族志』遼寧民族出版社
WEBページ
「持二代身份証可免費参観錫伯家廟」
http://www.syd.com.cn 2012-06-07 16:26:38 原載: 瀋陽網 http://wenhua.syd.com.cn/content/2012-06/07/content_26208683.htm
(2012年10月4日閲覧)