2024年12月の読書メーター

12月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1351
ナイス数:113

「プロレススーパースター列伝」秘録「プロレススーパースター列伝」秘録感想
私は大人になってから漫画『プロレススーパースター列伝』を読んだ。当時すでに本作品に登場する「アントニオ猪木(談)」やプロレスラーの伝説的エピソードの多くが虚構であることが広く知られていた。だがそれでもこの漫画には人を引きつけるものがあった。その秘密はやはり本書で語られる原作者梶原一騎先生と原田久仁信先生の真剣さ、あうんの呼吸、そして虚構の中で人間の本質を描く両先生の力量だったことがわかった。描き下ろし漫画「『列伝』よ、永遠なれ――梶原一騎先生に捧げる」も素晴らしい。本書は良書である!以上、俺(談)。
読了日:12月02日 著者:原田 久仁信
Sports Graphic Number 2024年 12/26 号 [雑誌]Sports Graphic Number 2024年 12/26 号 [雑誌]感想
岡田彰布前監督特集。阪神タイガースという球団で監督をやるというのは心身共にハードなことなのだと思い知らされる。巨人との天王山2連戦と監督としての最後の試合となったCSファーストステージ第2戦のドキュメントは深い内容だった。それから平田勝男前ヘッドコーチ(現二軍監督)、各選手への連続インタビューから見た岡田監督の姿は読み応えあり。特に佐藤輝明へのインタビューは悔しかった今シーズンを象徴するような内容で興味深かった。大学時代、オリックス時代についての記事からも後年の指導者岡田彰布の片鱗がうかがえた。
読了日:12月12日 著者:
まるで渡り鳥のように: 藤井太洋SF短編集 (創元日本SF叢書)まるで渡り鳥のように: 藤井太洋SF短編集 (創元日本SF叢書)感想
人類の前途と技術の発展について希望を抱かせてくれる作品群。所収作品の中で一番のお気に入りは「祖母の龍」。軌道ステーションで活躍する奄美のユタ(巫女)の物語。人類が宇宙に進出したはるか未来の時代でもなお奄美の文化が復興し、存続している世界。私も徳之島にルーツを持つ大阪育ちの奄美人二世なので、そうあって欲しいなと思って非常に楽しく読んだ。『銀河英雄伝説』トリビュート「晴れあがる銀河」は銀河帝国初期を描き、本編へとつながっていく物語。ルドルフ体制が固まっていく不気味な雰囲気の中にも希望が見いだせる。
読了日:12月21日 著者:藤井 太洋
『孫子』の読書史 「解答のない兵法」の魅力 (講談社学術文庫 2841)『孫子』の読書史 「解答のない兵法」の魅力 (講談社学術文庫 2841)感想
本書では『孫子』が人間集団の運動を簡潔に記し、そこには勝つための具体的な「解答」が書かれているわけではないこと、それゆえに『孫子』が抽象性と普遍性を持つことに着目する。そしてそのために『孫子』が中国、日本および世界でさまざまな読まれ方をされてきたことを紹介する。第I部は『孫子』の成立と銀雀山漢簡本の位置づけ、前近代中国と日本での『孫子』、満洲語訳からの仏訳、近現代日本、中国、西洋での受容など読み応えがある。第II部も西夏語訳の紹介など読み所が多い。「学術文庫版へのあとがき」では今世紀の状況について補足。
読了日:12月22日 著者:平田 昌司
開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学感想
一人のプロレスラーが失敗を重ねながらラーメン屋を経営してきたことで得た教訓がこれでもかと書かれている。ラーメン屋で利益を出すのは本当に大変なことなのだと思い知った。そして「お客さんは手間を買ってくれない」。いくら手間をかけても目に見えない部分にはお金を払ってくれない。だが川田は手を抜くことは拒み、「手間をかけていることは気づいてもらえないけれども、手を抜いてしまったら、即座にそれはバレるからだ」と説く。これは本当に至言だと思う。業種は違えど自分も仕事をしてきてそれを感じるからだ。
読了日:12月31日 著者:川田 利明
力道山──「プロレス神話」と戦後日本 (岩波新書 新赤版 2046)力道山──「プロレス神話」と戦後日本 (岩波新書 新赤版 2046)感想
力道山について特にプロレスデビューまでの経緯が丁寧に記されている。面白いのは、当時の対談記事などから力道山の持つプロレス観を指摘している点で、そこに「八百長」論とそれに対する反論、プロレスの暗黙のルールなどその後のプロレスでの主要な論点がすでに現れている。またこれまで力道山とプロレスとの出会いのきっかけとされてきた日系レスラーハロルド坂田との喧嘩のエピソードなど、これまでの「神話」や「定説」に疑問を呈しているところも読み所。デビュー前からすでに米国、政財界との人脈が太かったのも興味深い。
読了日:12月31日 著者:斎藤 文彦

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