2025年1月の読書メーター
1月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:930
ナイス数:136
マクベス (新潮文庫)の感想
魔女の予言にそそのかされたマクベス、マクベスをそそのかした夫人。だが二人は不安を解消するために血を流し続けながら、ますます不安にさいなまれ、身を滅ぼしていく。その悲劇性と人間の持つ弱さが巧みに表現されていた。また、シェイクスピアの豊かな比喩と人間観察力を感じた。やはり「古典」として長く受け継がれてきただけのことはあると思った。巻末の解題も良い。話は飛ぶが、私は黒澤明『蜘蛛巣城』を見たことがあるが、今『マクベス』を読んでみて『蜘蛛巣城』は『マクベス』の映画化としても非常によくできていたのだと思った。
読了日:01月02日 著者:シェイクスピア
在野と独学の近代-ダーウィン、マルクスから南方熊楠、牧野富太郎まで (中公新書 2821)の感想
近代英国では大学に属さないアマチュアの在野研究者たちが学問を担い、学会・学術雑誌や『OED』で在野研究者たちの横のつながりにより学知が結集された。それは現在のネットにおける「集合知」に似ている。一方、近代日本では「官」の権威を中心とした大学での学問の組織化が行われた。南方熊楠は英国流の道を行くが、牧野富太郎、柳田国男は「官と民の間」で自分を中心とする学問の組織化を行っていく。それらの違いは誠に興味深い。また超心理学者福来友吉、「最後の町学者」三田村鳶魚も印象的。近代の学問のあり方について紹介する好著。
読了日:01月05日 著者:志村 真幸
ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界 (文春新書)の感想
中国経済についてはEVなどハイテク分野の大躍進という「光」と不動産不況、社会を覆う悲観論という「影」の一見相反する現象が見られる。本書では中国経済についてミクロ・マクロ視点、短期・中期・長期的視点、業界と市井の声から冷静に分析し、光と影のように相反する現象は、いずれも「供給能力の過剰と消費需要の不足」という中国経済の宿痾に由来しているとする。またその要因として中国政府の供給サイドの効率化に偏重した政策、均衡財政主義的な中央財政と地方分権的な地方財政などの長期的・構造的課題を取り上げているところも読み所か。
読了日:01月18日 著者:梶谷 懐,高口 康太
中国目録学 (ちくま学芸文庫シ-47-1)の感想
本編では古代中国の木、竹、布に記録された書物から説き起こし、紙の発明と印刷術の発達とともに書物の形態が巻子本さらには冊子本へと移り変わる歴史を語る。そしてさらに進んで蔵書家の姿、また目録学、校勘学などといった書物を扱う学問がどのような発展を遂げたかを紹介していく。本編以外に収録された関連の文章も面白い。中国での書物の歴史、書物と技術発展の関係について関心を持つ人におすすめの本。私は中国の歴代の蔵書家の足下にも及ばない単なる積読家であり、書物についての学識も浅いので、本書は非常に勉強になった。
読了日:01月18日 著者:清水 茂
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