2025年8月の読書メーター
8月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2298
ナイス数:173
ミライライフライ(2) (アフタヌーンKC)の感想
苛烈な受験戦争がもたらす歪み、北京で暮らす出稼ぎ家庭の過酷な境遇、農村の精神病患者などなど、中国社会のやるせない現状が描かれる。中国の若者たち、庶民たちは常に生きづらい。しかしそのなかでも食べ、撮り、旅をし、生きていこうとする主人公たちはギラギラし、生き生きとしていて、わずかな希望が見える。
読了日:08月03日 著者:雨田 青イラスト図解 中華後宮事典: 中華風ファンタジー創作のためのの感想
後宮の内容は思ったより少なくて、中国王朝時代の政治、制度、文化、社会を広く取り扱っている。たとえば「皇帝」・「皇后」・「皇太子」……などなどキーワード別にまとめられていて、それぞれのテーマについて基本的な知識が得られる。また、オールカラーのイラスト、図解でイメージをつかみやすい。中国史ビギナーの方に便利だし、中国時代劇ドラマ鑑賞のお伴にも使えるかも。後宮の内容がもう少し多ければなお良かったかな。
読了日:08月03日 著者:建築知識2025年8月号の感想
図書館、ブックカフェ、戸建て、狭い賃貸など場所に応じた本棚の配置の仕方とか、照明の明るさとか、デッドスペース・隙間の活用とか、動線とか、本棚の自作方法などなど参考になる図解・記述が盛り沢山。自分も賃貸に住んでいるのでいろいろ参考にしたい。私のような本好きにとっては見ているだけで楽しい内容。
読了日:08月06日 著者:自分は「底辺の人間」です 京都アニメーション放火殺人事件の感想
自分も犯人のように氷河期世代の一人として「底辺」で辛酸を嘗めてきたので、彼の苦しみ自体は理解できる。だが、だからといってそうするのかいう怒りと疑問は湧いてくる。彼のそれまでの言動、そして最終的に放火に至った動機はあまりに稚拙で身勝手。ただ、そう考える自分は結局「運が良かった」だけなのかもしれないけれども。彼にとって惜しまれるのは、周囲や福祉からたびたび差し伸べられた支援の手を結局は払いのけてしまったこと。周りの人間に恵まれず、それゆえに周りの人間を遠ざけ、ますます周りの人間に恵まれなくなったのかなと思う。
読了日:08月07日 著者:京都新聞取材班プロ野球を選ばなかった怪物たちの感想
輝かしい実績を残しながらプロ野球を選択しなかった名選手たちに迫った一冊。それぞれが野球への強い愛を持ち、それでいて野球以外への視野の広さ、そして冷静な分析能力をも持ち合わせているところに感服した。それぞれが自分なりに考えて、納得した上で決断している。個人的には、東京六大学で大活躍しながらプロ入りを拒否し、大学を最後に野球を辞めた志村亮氏が印象的。当時の騒がれ方をリアルタイムで覚えているので、なぜ志村氏がこのような決断に至ったのかを知ることができてよかった。番外編の遠藤良平氏もなかなか興味深い。
読了日:08月07日 著者:元永知宏南京事件 新版 (岩波新書 新赤版 2073)の感想
日本軍側の史料、将兵の日記・記録、『南京戦史』、中国側の史料と証言、外国人による証言などから事件の全体像を明らかにする。近年の歴史否認主義に対する反証も随所で行われている。現地軍が独断専行し、兵站・法務体制を整えず、指揮統制が緩み、無責任体制が横行する。上海で戦い、そのまま南京へと侵攻し、疲弊し補給に事欠く将兵たちがその憤懣を無抵抗の捕虜に向け、さらに「現地調達」という名の略奪と暴行、強姦などの蛮行が繰り広げられる。そして将兵には犯罪意識がない。戦前日本の悪い点が凝縮して現れた事件だったというのが感想。
読了日:08月18日 著者:笠原 十九司七三一部隊の日中戦争 敵も味方も苦しめた細菌戦 (PHP新書)の感想
これまでの先行研究を受け、七三一部隊が開発した細菌兵器が日中戦争でどのように使用されたかという全体像を明らかにする。わかる点とわからない点を切り分け、慎重に検討している点に好感が持てた。本書では日中戦争での兵力不足による行き詰まりの打開のために細菌戦が行われたという背景、細菌戦が単に七三一部隊だけでなく、日本陸軍の上層部により組織的に行われた実態、作戦次元での細菌兵器の使用目的と使用の様相、細菌兵器による被害を描き出す。細菌兵器が中国の軍と民間人、さらには日本軍にも被害をもたらしていた様子には慄然とした。
読了日:08月18日 著者:広中 一成琉球処分-「沖縄問題」の原点 (中公新書 2860)の感想
日清に両属していた琉球王国が日本の沖縄県として併合される過程を概説。本書の特色は『尚家文書』など琉球王国側の史料を駆使し、併合に抵抗する琉球側の視点と論理を詳細に明らかにしていることである。そこからは琉球側の日本(ヤマト)への認識の深さが読み取れた。その一方で、併合した側である日本政府側の琉球への無知および政府官僚の沖縄と沖縄人への植民地視も明らかにされている。そしてその関係性がその後現在に至るまで継続していることを思えば、まず日本人としては沖縄について知ることから始めなければならないのだろうと思った。
読了日:08月18日 著者:塩出 浩之商人の戦国時代 (ちくま新書 1871)の感想
幕府、朝廷、寺社など権門をバックに既得権益を守って商売する商人たち、それに食い込もうとする新興商人たち、古文書を偽造してまで権利を主張する商人たち、楽市楽座を進めながら既存商人の既得権益も保護してキックバックを稼ぐ臨機応変な織田信長、瀬戸内海の海賊たち、戦国大名の御用商人、石見銀山と貿易などなど面白い話題が多い。戦国という既存秩序が動揺し、新興勢力が登場する時代状況の中での商人群像がよく描かれている。
読了日:08月30日 著者:川戸 貴史
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