私の「電脳清朝史」愛好史(五)そして2020年
2020年に入り、ようやく立ち直ってきた。
正月休みにはいろいろな本を読み、充電ができた。
さあ、これから!というときだったのだが……。
何が起こったかと言えば、御存知の通り新型コロナウイルスである。
在宅翻訳の仕事が軌道に乗り始めた4月頃、昨年(2019年)に勝ち取った定期翻訳案件がコロナ禍により一瞬で消し飛んだときには愕然とした。
せっかく着慣れない背広を着て営業したのに……。
多くの図書館が閉鎖され、学会・研究会も軒並み中止となっていった。
そんな中で注目されたのはやはりインターネットだった。
台湾の中央研究院歴史語言研究所が9月末までの期間限定で海外研究者向けに「漢籍電子文献」と「内閣大庫档案」(1)http://archive.ihp.sinica.edu.tw/mctkm2/index.html 以下、本章で引用するURLの最終確認日は2020年9月21日である。の有料部分を無料開放していただけたのは本当にありがたかった(アカウント申請が必要)。さらには、『中央研究院歴史語言研究所集刊』の電子版(2)https://www2.ihp.sinica.edu.tw/publish2.php?C=53&M=2&TM=5の無料公開も始まった。これらの公開により、台湾の史料および学術論文に一段とアクセスしやすくなった。
仕事が忙しいせいでなかなか見に行く暇がないのだが……。
満洲語のオンライン読書会も生まれている。Twitter上の有志が結成した「アジゲの会」(アカウント:@Ajige1)という読書会では、今年(2020年)7月から隔週日曜日の午後にZOOMにて清代の満文(満洲語)歴史史料の読解と日本語訳を行っている。7月からは満文『八旗通志』のアジゲ伝を読んでいる。毎回活発な質問と議論が行われ、回を追うごとに盛り上がっている。不肖私も末席を汚させていただいており、満洲語を学習し読解する上で大いに刺激を受けている。
また、最近では中国のSNSである微信(WeChat)で、中国の清朝史関連の研究機関、学術雑誌の公式アカウントをフォローしている。微信は2014年、当時勤めていた会社の中国の取引先との連絡のためにアカウントを登録したが、退職後はほとんど使っていなかった。その後中国でLINEが使えなくなったため、微信を友人知人との連絡に使うようになり、最近では学術情報の収集にも使うようになった。自分がフォローしているのは「中華文史網」、「瀋陽故宮博物院」と学術雑誌の『清史研究』(アカウント名は「清史研究杂志」)、『故宮博物院院刊』、『満族研究』のアカウントである。スマホでも手軽に清朝史の情報に触れられるようになり、便利な世の中になったものだと思う。
ただ、中米対立の中、微信もどうなるかはわからないが。
さて、ここまで自分の「電脳」による清朝史愛好史を書き綴ってきた。
1996年に初めてインターネットに出会ってから現在までの約24年間を振り返るといろいろ感慨深い。
「電脳」と私の歩みは常に清朝史とともにあったと言っても過言ではない。
今後も時代の変化とともに、私の「電脳清朝史」の在り方もまた変わっていくのだろう。
注