私の「電脳清朝史」愛好史(四)2012年秋~2019年

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私の「電脳清朝史」愛好史(三)2006年春~2012年秋

さて、いろいろあって大連から帰国したわけだが、それからが大変だった。
在宅翻訳だけでは食べて行けず、いろいろな職を転々とするも結局は長く定着することができなかった。
2016年4月から2018年3月までの2年間の派遣翻訳者の仕事が最長だった。
気力と経済力を削られ、心身を病み、2019年頃には八方塞がりの状況だった。
2012年から2019年は、人生で最も辛い時代だった。

ただ、そんな中でも、清朝史のことだけは忘れないようにしていた。

そんな私を助けてくれたのが、2010年代に急速に進んだ学術情報のデジタル化そしてネットワーク化だった。

日本での生活では、(三)でも述べた日本の学術リポジトリ、中国のウェブサイトに大いに助けられた。
加えて、2010年代には日本、中国、台湾での情報化技術の発展に伴い、学術情報のネットでの発信もますます発展した。
生活が苦しくて中国、台湾現地を訪れるのが困難だったし、学術書・学術雑誌の購入・購読もままならない状況だっただけに、まさに旱天の慈雨といったところだった。
なかでも、中国における清朝史研究誌の中心的存在である『清史研究』の電子版
(1) http://journal09.magtechjournal.com/Jweb_qsyj/CN/volumn/home.shtml 以下、本章で引用するURLの最終確認日は2020年9月17日である。の公開が開始されたのは本当にありがたかった。

日本でも、2016年以降、満族史研究会の会誌『満族史研究』の電子版(2)『満族史研究』の電子版の公開は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「中国・アジア研究論文データベース」https://spc.jst.go.jp/cad/homes で行われている。詳しい閲覧方法は本ブログの以下のページを参照されたい。「『満族史研究通信』・『満族史研究』がネットで見れます」 https://talkiyanhoninjai.net/archives/6542 の公開が開始され、これまた本当にありがたかった。

韓国でも国史編纂委員会が運営する『朝鮮王朝実録』(3)http://sillok.history.go.kr/main/main.doと『明実録』・『清実録』(4)http://sillok.history.go.kr/mc/main.doのネット上での公開・全文検索サービスが提供され、引き続き台湾の中央研究院歴史語言研究所でも韓国の国史編纂委員会との協力により『朝鮮王朝実録』と『明実録』・『清実録』(5)http://hanchi.ihp.sinica.edu.tw/mql/login.htmlの公開・全文検索サービスが始まった。
いつでもどこでも『実録』にアクセスでき、簡単に全文検索ができるようになるとは、自分が清朝史を学び始めた頃には想像もつかなかった。

フランス国立図書館(BnF)が運営する電子図書館ガリカ Gallica(6) https://gallica.bnf.fr/、ドイツのベルリン州立図書館 Staatsbibliothek zu Berlin(7) https://staatsbibliothek-berlin.de/ でも満洲語文献の公開が行われるようになり、研究者の方々を通じてそのことを知った。

日本でも数々の図書館・研究機関による史料・文献の公開がますます進展した。

なかでも自分にとっての大きな朗報は、2018年に始まった東京大学総合図書館(現在は東京大学アジア研究図書館デジタルコレクション(8)https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/page/home)による『八旗満洲氏族通譜』満文本の公開であった(9)https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/item?search=%E5%85%AB%E6%97%97%E6%B0%8F%E6%97%8F%E9%80%9A%E8%AD%9C『八旗満洲氏族通譜』は乾隆九年(1745)に成立した、八旗の八旗満洲所属者の系譜を集めた書。纂修当時までの系譜、主要人物の伝記が収められている。満文本と漢文本があり、漢文本の『八旗満洲氏族通譜』は遼瀋書社から影印本が刊行されている(『八旗満洲氏族通譜』遼瀋書社、1989年)。。同書は満洲人の系譜と人名を知る上で有用で、特に満文本は満洲人の満洲語での名前の綴りを知るのに便利である。例えば、とある満洲人の漢字名から満洲語での名前の綴りを知りたい場合、まず漢文本で漢字名の掲載箇所を探し、それから満文本で該当箇所に当たって、その人物の満洲語での名前の綴りを知ることができる。

また、Twitter上では研究者および出版社により歴史系書籍の出版情報・書誌情報が盛んに発信されている。さらにはTwitterおよび読書管理サービス「読書メーター」(10)https://bookmeter.com/ 筆者のアカウントURLは https://bookmeter.com/users/383213 である。では、歴史研究者・愛好者による感想・書評も盛んに発信されるようになった。
私も2012年頃からはこうした情報を本選びの参考にするようになり、「ハズレ」な本をつかまされることが大幅に減った。

Twitterでは多くの清朝史の研究者・愛好者の方々と知り合う機会を得ることもでき、ネット上で議論や情報交換を行うだけでなく、研究会などの席で実際にお会いするようになった。
私のような浅学菲才の徒を暖かく迎え入れていただき、感謝感激であります。

こうした学術情報のデジタル化そしてネットワーク化がなければ、とうてい清朝史・満洲語の勉強を続けることはできなかっただろう。
経済的に追い込まれ、心身を病む中、清朝史は自分にとって数少ない明るい希望だった。

さて、2019年6月、今のところ最後となる勤め先を退職したころには心身ともに疲れ果て、経済力もゼロに等しかった。
精神的にも身体的にも満身創痍、さながら「生ける屍」だった。
そこで7月以降は、心身と経済力を立て直すため、福祉制度に頼れる部分は頼りつつ、リハビリも兼ねて在宅翻訳の仕事を少しずつ増やすようにしていた。生活を見直し、規則正しい生活とバランスの取れた食事を心がけ、また読書時間を増やすなどした。
生活がようやく立ち直ってきて、再び清朝史に目を向ける余裕が生まれてきた。

そして今年、2020年を迎えることになる。

(つづく)

私の「電脳清朝史」愛好史(五)そして2020年

       [ + ]

    1. http://journal09.magtechjournal.com/Jweb_qsyj/CN/volumn/home.shtml 以下、本章で引用するURLの最終確認日は2020年9月17日である。
    2. 『満族史研究』の電子版の公開は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「中国・アジア研究論文データベース」https://spc.jst.go.jp/cad/homes で行われている。詳しい閲覧方法は本ブログの以下のページを参照されたい。「『満族史研究通信』・『満族史研究』がネットで見れます」 https://talkiyanhoninjai.net/archives/6542 
    3. http://sillok.history.go.kr/main/main.do
    4. http://sillok.history.go.kr/mc/main.do
    5. http://hanchi.ihp.sinica.edu.tw/mql/login.html
    6. https://gallica.bnf.fr/
    7. https://staatsbibliothek-berlin.de/
    8. https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/page/home
    9. https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/item?search=%E5%85%AB%E6%97%97%E6%B0%8F%E6%97%8F%E9%80%9A%E8%AD%9C『八旗満洲氏族通譜』は乾隆九年(1745)に成立した、八旗の八旗満洲所属者の系譜を集めた書。纂修当時までの系譜、主要人物の伝記が収められている。満文本と漢文本があり、漢文本の『八旗満洲氏族通譜』は遼瀋書社から影印本が刊行されている(『八旗満洲氏族通譜』遼瀋書社、1989年)。
    10. https://bookmeter.com/ 筆者のアカウントURLは https://bookmeter.com/users/383213 である。

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