村上寛『ラテン語の世界史』

村上寛『ラテン語の世界史』(ちくま新書 1860、筑摩書房、2025年)

ラテン語とラテン語世界の歴史。
興味深かったのは、中世西欧では、ローマ帝国時代には及ばないにせよ、キリスト教修道院により古典写本の作成、ラテン語教育が行われ、やがてそこから大学が発生するなど、ラテン語と古典教養が断絶しなかったこと。
また、行政用語としての使用、ラテン語の子孫といえるフランス語、イタリア語、スペイン語などロマンス諸語の形成過程、そしてラテン語が「俗語」とされてきた各国の言語、近世以降における「国語」へと次第に交代していく過程についても触れていて参考になった。

個人的な感想だが、ラテン語の「リンガフランカ」としての位置、ラテン語古典の「古典」としての位置、継承のプロセス、そして各国の「俗語」に次第に交代していく過程は、やはり東アジアでの漢文と漢文学を連想させる。

(本記事は「読書メーター」に投稿した感想に加筆修正を行ったものです)